勇壮、華麗に武者の晴れ姿が躍動する武者絵(むしゃえ)幟(のぼり)。戦国時代、戦場で使われた武士の軍旗である旗指物がその起源と言われています。鎌倉時代以降、武家では端午の節句に合わせ玄関先などに幟や旗指物などを飾って尚武を祝う習わしがあり、江戸中期には町民のあいだにも男子の健やかな成長を願う縁起物として鯉のぼりなどとともに広まります。
江戸時代中期の三河国土呂(現在の岡崎市福岡町)は、手染め幟の製造に欠かせない良質な三河木綿の産地であり、染技術の蓄積と染物の糊落しに適した清流が流れていたこと、また蒔絵や箔押し、錺金具職人等、仏壇や建具等の伝統工芸に携わる職人が集まる町であったことから、その発祥・発展の地となりました。
五月武者絵幟には、家康公をはじめ、豊臣秀吉、加藤清正、川中島の合戦、金太郎など、男児の立身出世・無事成長を祈念するにふさわしい絵柄が、伝統の色使いとボカシが特徴である“手描き本染め”の手法で染め上げられています。